未曾有の危機
今さら説明するまでもなく、日本だけではなく世界中で新型コロナウィルスが猛威をふるっています。そして私たちの生活はいろいろな意味で苦しくなり、たとえようのない閉塞感が漂っています。このうっとうしいウィルスを撃退するためにも、まずは不要不急、いやよほどの必要性がない限り外出を避け、感染拡大防止に一丸となって取り組まなくてはなりません。
では他人との接触をどのくらい控えれば、感染拡大を抑えることができるのでしょうか。日本経済新聞には、こんな記事が掲載されています。北海道大学の西浦教授による「人との接触」を「鉄道利用」を目安とした試算によれば、私たちが人との接触(鉄道利用)を20%控えた程度では、何も対策をしなかったときとほとんど結果は変わらないことがわかりました。しかし接触を80%控えると、感染者増加のピークを大幅に抑えることができるそうです。
出所:日本経済新聞2020/04/03
つまり、週末に移動制限をしたぐらいでは感染爆発は抑えらず、私たちの意識と行動を劇的に変化させなければ、このウィルスを駆逐することができないということなのです。年代にかかわらず、いまだに繁華街を無駄にうろつく人たちがいる以上、しばらくはこの閉塞感が続いていくことは間違いありません。
新しいビジネスの芽が
一方でこの新型コロナウィルス問題は、これまで当たり前だと思ってきた社会構造の大転換を促す大きな機会にもなってきています。「働き方改革」「時差通勤」「テレワーク」「オンデマンド教育」など、これまで懸案とされながら、動きが遅かった数々の問題が一気に進みつつあります。そしてそれをサポートするような新しい商品、新しいサービスの誕生、普及も進み始めました。ZoomをはじめとするWeb会議サービスの普及はその代表例でしょう。
出所:Zoomホームページ
ユーザーによるイノベーションが
変化は、メーカーや研究機関だけでなく、私たち個人の中にも生まれています。水野研究室の主要テーマの1つであるユーザーによるイノベーションが、数多く出現しているのです。例えば中国では、もはやジョークとも言えるようなマスクのユーザーイノベーションが生まれています。笑い飛ばすのは簡単ですが、限られたリソースやスキルの中で、なんとか自分の身を守ろうと知恵を絞るこの姿勢こそ、ユーザーイノベーションの原点です。
医療現場では、深刻なマスク不足に対応するため、透明な下敷きを改良したフェースガードを自作したり、鳥取県では業務中の飛沫感染を防ぐために、段ボールを使った簡易システムを自分たちで作ったりしています。
ユーザーネットワークの広がりが
このようなユーザーの動きは、SNSを通じて大きなネットワークやコミュニティとして、社会を動かすようになってきています。冒頭で、政府が呼びかけてもなかなか人々の意識が変わらないという話をしましたが、ユーザー間のコミュニケーションがそれを補ってくれるかもしれません。
例えば、新型コロナウィルス感染防止にもっとも効果的である手洗いの徹底について、プロサッカー選手のキングカズこと、三浦知良選手たちがこんな動画を流してくれています。手洗いをハッピーバースデイの曲を歌いながら行うことはとても効果的であることは、以前から知られていますが、こうしてSNSを通じた草の根的な活動によって、より多くの人に情報を届けるようになってきています。
前向きな新型コロナ対策を
そこで私たち水野研究室では、新型コロナ打倒のための自粛に取り組みながらも、同時にこの問題があるからこそ生み出される新しいイノベーションをウォッチしていきたいと思い、今回「新型コロナに負けるな」シリーズを開始したいと思います。
このYoutube動画で「せやろがいおじさん」がなかなか風刺が聞いた面白いことを言ってくれていますが、ホント、どうせ乗り越えなければならない試練であれば、楽しく、前向きに取り組まないとただつらいだけです。これから水野研究室では、火曜日と金曜日に新型コロナウィルスを乗り越え、さらに新しいビジネスチャンスを生み出すための知恵や社会の動きをリレー形式で発信していきます。
人類は、戦争や疫病といった困難の中から、同時に新しい進歩を生み出して成長してきました。今回の新型コロナウィルスも同じです。ピンチをチャンスとし、よりよい方向に世界が動いていくようにしようではありませんか。
新型コロナなんかに負けてはいけません。頑張りましょう。
(文責)日本大 商学部 教授 水野 学
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